【商品名】 肉筆卒業記念文集『くものしづく』
【著者名】 私立東光学園専修商業学校生徒/池上信一
【刊行年】 昭和25年
【備考・コメント】
B5判、400字詰原稿用紙99枚、ペン書、和綴。
昭和18年に同校に入学した生徒八名と、当時同校で教鞭を執っていた小説家・池上信一が執筆したもの。
簡素な厚紙表紙には「昭和二十五年専修卒業記念 くものしづく」と墨で書かれている。
本書は全二部構成で、第一部は同校喇叭鼓隊所属の生徒四名による「ラッパ鼓隊時代の想ひ出」「喇叭の音」他。昭和20年1月の空襲で母校と楽器が全焼した際の回想を含む。
第二部は池上信一「思い出は雲に似てつかみどころなし」(全25枚)と、演劇や文芸に青春を捧げた生徒四名による「落伍者の郷愁」「あのこと」他。巻頭に肉筆水彩画一葉入。
最終頁の「編集後記」落丁、表紙周りに少イタミ有。
●“私が専修に入学したのは昭和十八年である。其の頃は軍国主義の全盛時代で、その背景を得て喇叭鼓隊が重要な位置を占めて居た事は云う迄も無い。規則書には大々と写真附属でその全国コンクールでの優勝をかきたて、且つ又入学式には講堂に集つた新入生や父兄達の前で専修男児の情熱が音化されたかと思はれる勇壮な演奏に依つて初めて聴く者の度肝を抜いたものだ。私が専修に入学を決意したのも実は、此の喇叭鼓隊に憧れてである。そして入学すると直ぐにそれに入隊した事は云う迄も無い事である。それからは毎日毎日放課後には残つてしぼられたものだ…(後略)”
(第一部所収・小宮君『想い出の喇叭鼓隊』より)