【商品名】 『詩と音楽』 創刊号〜2巻9号内12冊一括
【著者名】 山田耕筰・北原白秋主幹 北原鐵雄編
【発行元】 アルス
【刊行年】 大正11・12年
【状態】 2巻9号背補修、2巻2号巻末広告頁一部ヤブレ欠、一部背少イタミ有
【備考・コメント】
B5判 各100P程。
震災の影響を受け2巻9号の「震災記念号」を以て終刊となった全13冊のうち2巻3号のみ欠。1巻4号のP21・22が欠けているが、前後の文面(P20・23)にズレは見られないため刊行時からの元落、もしくはノンブル誤植と思われる。
“『詩と音楽』は休刊する。止めるのではない、白秋氏と私も、恐らく、極めて近き将来に於いて、この雑誌を再刊せずにはいられなくなるに違ひない。そして、鐵雄氏のあの力強い、太い眉は、屹度、それを実現させずには置くまい。過去一年の間にこの誌上に私共の奏で来た楽曲は、決して Table music ではなかった。尠くとも、それは、純正な交響楽ではあり得なかったにしても、交響楽詩であり、音詩ではあり得たと信じてそれをせめてもの喜とするものである。私共はこの大なる天災に障げられて、残念ながら、私共の合奏を中断する。それはしかし、謂ふ所の pause ではない。長い楽曲に突如あらはれ来る一つの黙符である。私共はここしばらく無声の演奏に入るのである私共は災厄によってうけた暗示を静かに解かねばならない。そして新しい私共の時代を作り出すべく自らを養ひ、自らを培はねばならない、『詩と音楽』は更生のためここに繭を結ぶのである。私はしかし希ふ。どうか、いまここに結ばれた蛹を腐敗せしめないようにと! (中略)
また、しとしとと霖雨にも似た雨が降り出した。今宵もまた、幾十萬の羅災者が冷気と雨にどれ程か困惑することであらう。私は今それを思うて、言ひ表し難き感慨に沈んでいる。”
(山田耕筰「廃墟に立ちて」より)