【商品名】 奈良県立宇陀高等女学校に通うある一年生の「生徒日誌」
【刊行年】 大正12年
【状態】 経年相応の劣化有
【備考・コメント】
菊判、140P余、直筆ペン書。
大正12年4月1日より翌年3月31日にかけて4月と5月を除きほぼ毎日記入。同校は同年4月に開校、戦後は新制高等学校として奈良県立榛原高等学校に改称、平成18年に惜しくも閉校となる。筆記者は80余年の歴史を誇った同校の第一期生。
○ 最早正月も二日立った。正月と云ふと人々は喜ぶが私は少しも嬉しい気もしない。一休禅師の云った 「正月はめいどのたびの一里づか、嬉しくもあり、悲しくもあり」 と云ふ言葉を思い出して、人々が正月正月と喜ぶのもさながら死を待つようにしか思はれない。
(2月6日)
○ 今日はほんとうによく晴れた日である。学校帰り道に桃の花のつぼみがすてられてあった。枝のままであった。こんなよい晴日和に咲かうと待っていたのにすてられたのは可愛そうに思ったから家にもってかへった。よい匂のするやうな気がした。せんだいへさして居いた。本をおきに行くとだれが生けたのか私の机に花が飾ってあった。梅の花で大分咲いていた。花びらが一枚むしり取られて机の上に落ちていた。よいにほいなのでかごうとすると一ひら、ひらひらと散った。
(3月6日)