【商品名】メニューヒン堤琴演奏会プログラム
【発行元】朝日新聞社主催
【刊行年】昭和26年
【状態】曲目欄にアンコール曲の書入、経年相応の劣化あり
【備考・コメント】
A4判、16P、半券・新聞記事貼込有。
戦後最初の “大物” による来日公演の衝撃を、作家・小林秀雄は『朝日新聞』紙上に以下を綴った。
“会場にあふれる聴衆は熱狂していた。久しい間、実に久しい間わが国の、音楽の好きな人達は、ヴァイオリンの本当の音色というものを聞かずに暮していたのである。
第一日目の演奏を聴いて、何か感想を書くことを約したが、きっと感動してしまって何も言うことがなくなるだろうと考えていた。その通りになった。タルティニのトロリが鳴り出すと、私はもうすべての言葉を忘れて了った。バッハだろうが、フランクだろうが、それはもうどうでもよい事であった。さような音楽的観念は、何処へやらけし飛び、私はふるえたり涙が出たりした。魂を悪魔に渡してから音楽を聞くということもある。タルティニはうそをついたのじゃあるまい。ただ、私は夢の中で、はっきり覚めていた。そして名人の鳴らすストラディヴァリウスの共鳴盤を、ひたすら追っていた。ああ、何という音だ。私は、どんなに渇えていたかをはっきり知った。”